自分の個人情報が知らないところで売買されているという可能性を、少しでも考えたことがあるでしょうか。
実は、個人情報を含む名簿を作成・販売する「名簿業者」と呼ばれる会社が存在しているのです。
これらは、企業の営業・新規開拓などを支援する役割を持っています。
しかし、名簿業者の取引先は正式な法人だけでなく、時には詐欺グループなどの反社会的勢力にまで名簿を売買しているケースがあります。
このような名簿業者に勝手に個人情報を売られ、詐欺被害を受けてしまうとなったら被害は甚大になるでしょう。
今回の記事では、名簿業者とはどのような存在なのか解説し、個人情報をむやみに知られないための対策についても紹介していきます。
目次
ニュース概要
特殊詐欺グループに個人情報を提供したとして、大阪府警は12日までに、名簿事業者「ビジネスプランニング」(東京・中野)の代表取締役、山崎勝美容疑者(75)=東京都練馬区=を電子計算機使用詐欺ほう助などの疑いで逮捕した。府警は認否を明らかにしていない。
逮捕容疑は2024年11月8日、詐欺などに使用される恐れがあることを知りながら、15府県に住む人の個人情報約1万4800件を特殊詐欺グループに17万7600円で提供した疑い。
引用元:詐欺グループに個人情報販売容疑、名簿業者を逮捕 1万件超提供か – 日本経済新聞
「名簿業者」とは?
名簿業者による、個人情報を勝手に売買する商売がなぜ成り立っているのか、その仕組みからご説明します。
取り扱う情報が法人・個人で異なる要素が多い
名簿業者とは、法人または個人の名称や住所・電話番号・メールアドレスといった情報を取りまとめた名簿を作成し、販売している業者です。
このような個人情報を販売する業者について、「違法ではないのか」と思う人も多いでしょう。
しかし、取り扱う情報が法人のものか、それとも個人のものかで違法性が大きく異なります。
法人や個人事業主の情報を取りまとめた名簿業者については、結論から言えば違法性はありません。
なぜなら法人に関する情報については各法人のホームページなどに掲載されている場合が大多数であり、そもそも公開されているものであるからです。
また、代表者名や役職者名も掲載されている場合であれば、同時にそれらの人物の名前も知ることができてしまいます。
法人の名簿業者は、公開されている法人情報を一つずつ調べ上げるのが面倒な営業担当者からの需要があります。
違法性もないため、利用する上で法的な問題点はありません。
個人の情報を取り扱う名簿業者については、そもそも2022年に改正された個人情報保護法によって、本人の明確な同意がない場合の個人情報の売買は違法となりました。
しかし、下記のような条件を満たす名簿であれば、売買されたとしても違法ではありません。
- 掲載された人がすぐに情報の削除を申請できる
- 掲載された人が情報をすぐ確認できるようになっている
- 「個人情報委員会」への届出を行なっている
このような人からの同意を取った上での名簿掲載は「オプトアウト方式」と呼ばれ、この方式を取っている名簿であれば売買が可能となっています。
個人情報の収集方法
名簿業者の作成する名簿はジャンル別に数万〜数百万件もの記載があり、1件あたりの単価が10円ほどとなっている場合がほとんどです。
これほどの件数を、名簿業者はどのようにして収集するのでしょうか。
アンケートに答えるだけでポイントがもらえるといった謳い文句で勧誘を行なうアンケートサイトから、個人の名簿業者に流れていると言われています。
これは名簿業者が立ち上げたサイトによって収集されているもので、利用時に「個人情報の取り扱いについて」といった注意書きへの同意を求められるかと思いますが、その中に個人情報の取得を許可する項目が書かれています。
多くの場合この注意書きへの同意がないとサービスの利用ができないため、泣く泣く同意している人も多いでしょう。
また、注意書きを読まずに同意している人も、気付かぬ内に自らの情報を提供している可能性があります。
この注意書きへの同意が、個人情報保護法における「本人の明確な同意」とみなされるため、提供した情報を名簿化されても違法性を問うことができなくなります。
名簿業者も、他の名簿業者を利用して自社で取り扱う名簿を作成する場合があります。
2022年の個人情報保護法以降、個人情報をまとめたリストを新しく作成するハードルはかなり大きくなりましたが、それ以前に作成された名簿については問題なく販売されていることが多いです。
住所や電話番号を変更しない人も多いため、数年前に作られた名簿であってもそのまま利用できてしまうでしょう。
このような名簿業者が増えた背景には、昔は無料で各家庭に配布されていた電話帳の冊子が作られなくなったことが起因しています。
携帯電話が普及する前は各家庭の電話番号を取りまとめた電話帳が頒布されており、個人宅の電話番号を簡単に手に入れることができました。
しかし、個人情報保護の動きが高まった結果、電話帳の存在意義はどんどん失われていき、分厚かった冊子はどんどん薄くなっていきました。
ですが、当時から引っ越しをしていない家庭も多いため、昔の電話帳から個人情報の名簿を作成しても、十分に再利用できてしまうことがあります。
名簿業者が抱えるリスク
名簿業者による名簿作成や利用者による名簿の購入に違法性がないとしても、名簿業者自体は様々なリスクと隣り合わせの業種です。
どのようなリスクをはらんでいるのか、具体的に解説していきます。
反社会的勢力に個人情報が行き渡る
名簿業者の利用に違法性がなく誰でも利用できてしまうということは、例え怪しい人物・グループであっても名簿の購入ができてしまうことでもあります。
反社会的勢力が詐欺などの犯罪に利用する目的で名簿を購入し、甚大な被害が波及していく可能性も十分に考えられます。
また、このような存在に名簿を販売すると、名簿業者も犯罪ほう助の罪に問われます。
そのため、業者側としてもできる限り販売は避けたいものですが、完璧に回避するのは難しいでしょう。
名簿業者に個人情報が行き渡った時点で、自分自身が詐欺などの犯罪に巻き込まれる可能性が存在し得ることになってしまいます。
許可を得ずに名簿を作成されてしまう
現行の個人情報保護法においては、明確な同意が得られない限り個人情報をまとめた名簿を作成することはできません。
しかし、名簿の購入者側が許可の有無を確かめることもできません。
業者側が「オプトアウト方式適用済み」「全件許諾済み」のような謳い文句を掲げていたとしても、その実態を確かめることはできないため、名簿が掲載者の知らない内に作成されたものである可能性もあります。
また、掲載された人が自分が名簿に載っていることを知る術はないため、知らない内に多くの人に自分の個人情報が行き渡っている可能性を捨てきれません。
購入者がさらに詳細な名簿を作成する可能性がある
名簿業者から購入した名簿をたたき台にして、その購入者が独自の詳細な名簿を作り上げ、明確なターゲティングを可能にしたものを作成・販売したり、犯罪に利用する可能性も考えられます。
名簿の情報を基に営業電話や音声ガイダンスを発信したり、電気屋などの専門業者を偽って訪問や住居への下見を行なうことで、詳しい情報を収集するというものがあります。
これによって、数年前の情報をまとめた名簿であっても現在の情報にブラッシュアップすることが可能です。
そのため、不審な電話や訪問には、十分な警戒心が必要でしょう。
探偵はどう読む
「知らない営業電話や怪しいDMが届く…」そんなとき、自分の個人情報が名簿業者を通じて売られている可能性があります。
探偵の視点では、情報流出は一度起きると回収が難しく、被害拡大を防ぐには早期の調査と対策が不可欠です。
海外に比べ日本は個人情報保護への意識が低く、名簿取引の温床になりやすいのも事実。
セキュリティ強化は当然として、すでに漏えいしていないかを確認する調査も有効です。
被害の不安がある方は、探偵へ相談し適切な対応を検討することが大切でしょう。
探偵ができること
- 名簿業者や不審なリストに個人情報が含まれていないか 流出チェック調査
- SNS・掲示板・ダークウェブなどでの 個人情報の拡散状況調査
- どこから情報が漏れたのか、 流出経路の特定サポート
- 悪用される前に、 削除依頼や掲載取り下げの支援
- 不審な営業・迷惑行為の 発信源特定(電話番号・差出人調査)
- 再流出を防ぐための セキュリティ対策アドバイス
ご要望に合わせて、調査+対処までトータルでサポート可能です。

執筆/監修者:Kazuya Yamauchi2025年8月20日
探偵調査歴20年。国内外の潜入調査、信用に関する問題、迷惑行為、企業や個人生活での男女間のトラブルなど、多岐にわたる問題を解決してきました。豊富な経験と実績を基に、ウェブサイトの内容監修や執筆も行っています。