相続する遺産のなかに不動産があることは少なくない話かと思いますが、綺麗に分割することができずにトラブルになることが多々あります。
この問題を解決するうえで「売却」が一つの解決方法ですが、売却するには市場を調べる必要があります。
今回は、探偵が行なう市場調査についてご紹介いたします。
相続不動産の価値判断を誤ると、親族間トラブルや大きな損失につながります。本記事では、不動産会社の査定では見えない「市場調査」の重要性と、探偵が行う客観調査の役割を解説します。
目次
不動産相続でなぜトラブルが起きるのか
評価額をめぐる意見対立
相続人それぞれの立場や利害、将来設計の違いにより、「この不動産の価値は本当に適正なのか」という疑念が生じやすくなります。特に一方が高く評価し、もう一方が低く見積もる場合、価格そのものが争点となり、話し合いが感情的対立へと発展するケースも少なくありません。
感情と財産が絡む相続の現実
相続不動産には「思い出の家」「先祖代々の土地」といった心理的価値が付随することが多く、単なる資産ではなく感情の対象として扱われます。その結果、冷静な判断が難しくなり、売却か維持かという選択だけでも大きな衝突を生む原因となります。
判断材料の不足が不信感を生む
客観的な根拠となる資料がないまま話し合いが進むと、「誰かが都合の良いように操作しているのではないか」という不信感が広がります。明確な数値や第三者の調査結果がない環境では疑心暗鬼が加速し、相続人間の関係悪化を招きやすくなります。
相続における不動産市場の特性

探偵による市場調査が果たす役割
相続不動産の市場価値は、不動産市場における需要と供給のバランスや地域特性、周辺環境の変化によって大きく左右されます。しかし、不動産会社の査定だけでは「なぜその価格になるのか」という根拠が不透明になりやすいのが現実です。
探偵による市場調査では、単なる机上の価格算出ではなく、過去の成約事例、近隣住民への聞き込み、物件の評判や噂、トラブル履歴まで含めた実態調査を行い、相続人が納得できる判断材料を可視化します。
これにより「誰かに都合よく操作された価格ではない」という安心感を生み、感情的対立の緩和につながります。
価格変動と隠れたリスクの把握
不動産市場の価格は社会情勢や地域開発、人口動態などの影響により常に変動しています。表面的な相場だけを見て判断すると、実際の資産価値との乖離が生じることも少なくありません。
探偵は価格変動だけでなく、心理的瑕疵や周辺トラブル、不審な出入り、過去の事故歴など、価値に影響するリスク要因の有無も調査します。
これらの情報を事前に把握することで、相続人間の無用な対立を防ぎ、不動産の適正な扱い方を冷静に検討できる環境を整えることができます。
不動産相続の市場調査の必要性
不動産相続において市場調査は、相続人が感情ではなく事実に基づいて判断するための重要な基盤となります。適正な評価を行わなければ、不公平感や疑念が生じ、深刻な相続トラブルへと発展する可能性も否定できません。
探偵による市場調査では、単なる不動産会社の査定とは異なり、過去の取引実態、近隣市場の動向、物件に付随する風評や潜在リスクまでを含めた客観調査を行います。
これにより、相続人は市場価値を正確かつ多角的に把握でき、相続財産の適切な評価や、売却・分割・活用といった処分方法を冷静に検討することが可能となります。
さらに、市場調査の結果を報告書として可視化することで、「誰かの主観」ではなく「第三者の調査結果」として共有できるため、相続人間の不信感を抑え、円満な話し合いと円滑な解決へと導く重要な役割を果たします。
探偵調査による不動産相続の市場調査
探偵が行う不動産相続の市場調査は、単なる価格確認ではなく「資産価値の裏付け」と「トラブル防止のための証拠収集」を目的としています。以下は、実際に行われる調査項目の一例です。
・不動産市場の価格動向の調査
対象不動産が所在する地域の価格推移を時系列で調査し、需要と供給、景気変動、行政施策など、価格変動の背景となる要因を総合的に分析します。これにより、現在の価値だけでなく「将来的な変動リスク」も可視化します。
・類似物件の実取引価格調査
同地域・同条件の物件における実際の成約価格を調査し、机上の査定ではなく「売買が成立した事実ベースの価格」を参照します。
これにより、相続人間で生じやすい「高すぎる・安すぎる」という主観的な意見の衝突を減らす根拠資料となります。
・周辺環境および生活利便性の調査
対象不動産周辺の環境を実地調査し、住民層・治安・騒音・交通量・商業施設の利用実態など、生活価値に直結する要素を確認します。
これらの情報は、表面上の立地評価では分からない「住みにくさ」や「将来的な価値低下リスク」の判断材料となります。
・不動産市場のトレンド分析
過去の価格推移と地域開発計画を照らし合わせ、売却・保有・賃貸の最適なタイミングを予測します。
相続後の活用戦略を検討する上で、損失回避の指標として重要な情報です。
・建物状態および隠れた瑕疵の確認
建物の劣化状況や修繕履歴を確認し、外観だけでは分からない雨漏り・傾き・過去のトラブル履歴などの有無を調査します。
これらは将来的な追加費用や資産価値低下に直結するため、相続判断において極めて重要な要素となります。
市場調査の調査事例|調査費用
40代女性 相続した実家の売却判断に迷ったケース
片親で育ててくれていた母が1ヶ月前に亡くなり、遺品整理を進めていました。早くに父と離婚し、祖父母と暮らしていた実家もすでに祖父母は他界しており、兄弟もいないため、実家の土地と建物を含めすべてを相続することになりました。
すでに結婚して自宅を購入していたため、夫と話し合った結果、「実家は売却する方向」でまとまりました。しかし建物が築古で老朽化しており、そのまま売るべきか、更地にして売却した方が良いのか判断がつかず、共働きで時間も取れない状況でした。
そこで、「調査から不動産会社との連携までまとめて任せられる」という説明を受け、探偵に市場調査と売却戦略の相談をしました。
調査の結果、建物は修繕コストがかさむ状態である一方、土地の需要が高いエリアであることが判明しました。そのため、価値の低い建物を解体し、更地として売却することで、当初の査定額よりも高い価格で売却することができました。
また、不動産売却に伴う税金の注意点や必要書類についてもアドバイスを受けることができ、「自分たちだけでは判断できなかったので依頼して良かった」という感想をいただきました。
調査費用
調査項目:市場調査(価格動向・類似物件・周辺環境・建物状態)
調査期間:10日間
調査費用:33万円(税込)
50代男性 兄弟間で評価額が対立していたケース
地方の実家を兄弟3人で相続することになり、長男は「早く売却して現金で分けたい」、次男と長女は「しばらく保有して価値が上がるのを待ちたい」と意見が割れていました。不動産会社に査定を依頼したものの、それぞれが別々の会社に査定をとったため、提示額もバラバラで不信感が高まっていました。
話し合いがまとまらず家族関係が悪化しつつあったため、第三者として探偵に市場調査を依頼。過去数年分の成約事例や、同一エリア・同程度の土地面積の実勢価格、今後の開発計画などをもとに、相場の「根拠」を明示した報告書を作成しました。
その結果、兄弟全員が同じ情報を共有できたことで、「どの価格帯で売却するのが妥当なのか」「いつまでに売却するか」といった具体的な条件について冷静に話し合えるようになりました。最終的には、市場調査で示された価格帯の中間値で売却し、トラブルなく分配が完了しました。
調査項目:市場調査(実勢価格・成約事例・将来の開発計画)
調査期間:14日間
調査費用:38万5,000円(税込)
60代女性 空き家相続と固定資産税負担の軽減を図ったケース
夫の死後、地方にある戸建て住宅を相続したものの、自身は都市部の賃貸マンションで生活しており、相続した家に住む予定はありませんでした。しかし、毎年の固定資産税や維持管理の負担だけが重くのしかかり、「売るべきか・貸すべきか・更地にすべきか」で決断できずに数年が経過していました。
そこで、現地の状況を含めた客観的な判断材料を得るため、探偵に市場調査を依頼。周辺の空き家率や賃貸需要、将来的な人口減少予測、建物の老朽度合いなどを総合的に調査しました。
調査の結果、賃貸需要が低く、将来的な地価下落が想定されるエリアであることが判明しました。そのため、建物の最低限の安全対策のみ実施したうえで、早期売却を行うことが最も負担軽減につながると判断されました。
依頼者は報告書をもとに不動産会社と交渉し、当初提示されていた額より条件の良い価格で売却契約を締結。固定資産税や維持費の負担から解放され、「もっと早く相談しておけば良かった」とのお声を頂きました。
調査項目:市場調査(空き家率・賃貸需要・人口動態・建物状態)
調査期間:12日間
調査費用:36万3,000円(税込)
不動産の相続問題と専門家連携による総合サポート
人生の中で誰もが直面する可能性のある不動産相続問題。できることなら手間や揉め事などのトラブルは避けたいものですが、感情や金銭、家族関係が複雑に絡み合うことで、当初の想定以上に問題がこじれてしまうケースも少なくありません。
「生前贈与」や「遺言書」があればトラブルの回避につながることもありますが、不動産が関わる相続ではそれだけで解決できない場面も多く、売却・保有・賃貸といった判断に迷う方がほとんどです。
ファミリー調査事務所では、こうした複雑な不動産相続問題に対し、各種専門家との連携による総合的な調査・サポート体制を整えています。
不動産売却に関わるケースでは、売買実務に精通した不動産業者と連携し、依頼者が望む「高額売却」を目指して複数の不動産会社から情報を収集し、最適な売却戦略を構築します。
さらに、相続に伴う相続税や法的手続きについても、弁護士や専門士業と連携することで、調査から手続き、売却までを一括でサポートすることが可能です。
そのまま所持するのか、売却するのか、貸し出すのか――判断に迷う不動産相続だからこそ、感情ではなく「情報と根拠」に基づいた冷静な選択が重要になります。
ファミリー調査事務所は、不動産相続に関する豊富な知識と調査実績を活かし、依頼者一人ひとりの状況に合わせた最適な解決策をご提案いたします。

執筆者:Kazuya Yamauchi
探偵調査歴20年。国内外の潜入調査、信用に関する問題、迷惑行為、企業や個人生活での男女間のトラブルなど、多岐にわたる問題を解決してきました。豊富な経験と実績を基に、ウェブサイトの内容監修や執筆も行っています。





















