「家賃を3ヶ月滞納した入居者が突然失踪してしまった」
「連帯保証人と連絡は取れるが、支払いを拒否されている」
「保証人からの回収方法と手続きがわからない」
このような状況にお困りではありませんか?
国土交通省のアンケートでは、滞納家賃に悩まされている大家は23.6%と約4人に1人いるという結果が出ています。
連帯保証人へ家賃を請求できるとわかっていても、いざ督促しようとなると具体的にどう行えばよいのかと戸惑われますよね。
そこで本記事では、家賃滞納者が失踪した場合の保証人への請求方法から法的対応まで詳しく解説していきます。
相談事例を交えながらご紹介していきますので、スムーズな解決への糸口になれば幸いです。
目次
借主が家賃滞納のまま失踪したときの3つの問題
家賃滞納者が失踪した場合、大家さんは次の3つの問題点を解決していきます。
- 滞納家賃を回収する
- 賃貸借契約を解除する
- 残置物を処分する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
問題1. 滞納家賃の回収
家賃滞納者が失踪したときの問題1つ目は、未払いの家賃をどう回収するかという点です。
滞納家賃は、未払い期間が長ければ長いほど回収が困難になります。
また、家賃債権には時効(5年)もあるため、少しでも早く解決する必要があります。
家賃滞納者が失踪したケースでは、借主の資産状況や現在の収入源も不明なため、回収が難しくなることが多いです。
滞納家賃を確実に回収するためには、連帯保証人への請求が欠かせません。
- 借主の所在が不明なため、直接請求することができない
- 滞納額が大きいほど、一括での回収が難しくなる
- 滞納が長期化すると、遅延損害金も膨らむ
問題2. 賃貸借契約の解除
家賃滞納者が失踪したときの問題2つ目は、賃貸借契約を解除しなければならない点です。
借主と連絡が取れなくなった場合でも、賃貸借契約は継続されています。
失踪していても物件に対する居住権は維持されているため、大家さんが勝手に次の行為を行うことはできません。
- 室内への無断立ち入り
- 次の入居者との新規契約締結
- 残置物の処分や部屋の改装
賃貸借契約契約を終了させるには、借主不明でも法律に基づいた正式な解除手続きを踏む必要があります。
- 借主の権利を無視した行動はトラブルにつながる
- 借主不在での「解除の意思表示」の伝え方を知る必要がある
- 賃貸借契約の解除に法的手続が必要になる
問題3. 残置物の処分
家賃滞納者が失踪したときの問題3つ目は、物件に残された残置物の扱い点です。
借主が突然いなくなった場合、部屋には様々な私物が取り残されているケースが少なくありません。
家電製品や家具類から日用品など、さまざまな物が放置された状態です。
しかし、これらを大家の判断で勝手に廃棄することは法的にリスクがあります。
無断で処分すると、次のような責任を問われる恐れがあるため注意しましょう。
- 財産権侵害による民事責任
- 器物損壊罪等の刑事責任
- 精神的苦痛に対する慰謝料請求
残置物を適法に処分するためには、契約終了手続き→明渡し訴訟→強制執行という段階的な法的手続きが必要です。
これらの手続きは、通常半年程度の期間がかかります。
- 所有権は依然として借主にある(賃貸借契約解除が不可欠)
- 処分できるようになるまで一定期間保管しなければならない
- 保管・処分費用の負担が大きい
借主が家賃滞納のまま失踪したときの3つの対応策
家賃滞納者が失踪した場合の対応策は、次の3つです。
- 連帯保証人へ請求する
- 公示送達で契約解除意思を表明する
- 強制執行で建物の明け渡しを行う
それぞれの手順を解説します。
対応策1. 連帯保証人への請求
家賃滞納者である借主と連絡が取れない場合、連帯保証人へ連絡しましょう。
連帯保証人は、主債務者(借主)とまったく同じ責任を負います。
そのため、借主が滞納している家賃だけでなく、遅延損害金まで連帯保証人に請求できます。
連帯保証人への請求方法を3ステップでまとめました。
請求手順 | 具体例 |
1. 電話・メール・書面・訪問による督促 |
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2. 書面での正式な請求(催告書) |
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3. 法的手続きの準備 |
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催告書の記載例は、以下をご参考ください。
対応策2. 公示送達で契約解除意思を表明(簡易裁判所)
借主と同じ責任を負う連帯保証人ですが、賃貸借契約を解除することはできません。
賃貸借契約を解除するには、解除予定である旨を借主本人に伝える必要があります。
借主の所在がわからないケースでは、公示送達という手続きを行い契約解除の意思表示をしましょう。
公示送達は、裁判所内にある掲示板に書面を掲示することで、行方の分からない借主に書類が届いたものとして認めてもらうための手続きです。(民事訴訟法第110条)
掲示から2週間経過すると、送達されたものとみなされます。
公示送達の方法は、次の4ステップで行われます。
契約解除手順 | 具体例 |
1. 裁判所への申立て |
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2. 裁判所による審査 |
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3. 公示送達の実施 |
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4. 契約解除の確定 |
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対応策3. 強制執行で建物明け渡し(裁判所)
残置物を処分するためには、建物明け渡しの強制執行を行う必要があります。
強制執行とは、判決などを無視する債務者に対し、強制的に財産の差し押さえなどを行う法的手続きです。
強制執行には費用と時間がかかりますが、確実に物件を取り戻すための最終手段です。
建物の明け渡し後は、残置物の処理や原状回復を行い、新たな入居者の募集が可能になります。
なお強制執行では、建物明け渡しと合わせて未納分の滞納家賃も回収しましょう。
その際、強制執行にかかった費用なども請求できます。
残置物処分までのステップは、次の4つです。
残置物の処分手順 | 具体例 |
1. 建物明け渡し訴訟の提起 |
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2. 強制執行の申し立て |
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3. 強制執行の実施 |
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4. 残置物の処分 |
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借主が家賃滞納のまま失踪したときの3つの注意点
家賃滞納者が失踪したときは、次の3つに注意しましょう。
- 賃貸借契約を解除する前に立ち入らない
- 連帯保証人への請求は強引に行わない
- 家賃債務の時効5年以内に解決する
上記の注意点を守らないと、訴えられてしまう可能性もあるため確認していきましょう。
注意点1. 賃貸借契約解除前の立ち入りは厳禁
借主が失踪していても、正式に契約が解除されるまでは勝手に物件に立ち入ることはできません。
借主の了承を得ていない場合の立ち入りは、住居侵入罪に該当する可能性があります。
- 住居侵入罪(刑法第130条)
- 不法行為による損害賠償責任(民法第709条)
- プライバシー侵害
なお、大家は次の3つの例に当てはまる場合のみ例外的に緊急の立入りが許されることがあります。
- 火災や水漏れなどの緊急事態
- 他の入居者への深刻な被害防止
- 生命・身体の安全に関わる場合
上記のような緊急時でも、警察立ち会いの下で行い、立入りの様子を記録・証拠化しておくとトラブルを回避できます。
注意点2. 連帯保証人へ強引に請求しない
連帯保証人への請求は法的に正当な権利ですが、強引な請求方法は法的問題に発展する可能性があります。
避けた方がよい請求方法は、次のような行為があります。
- 深夜・早朝の電話(迷惑防止条例違反)
- 執拗な訪問(ストーカー行為規制法違反の可能性)
- 勤務先への連絡(名誉毀損の可能性)
- 第三者への債務内容の漏洩(プライバシー侵害)
- 脅迫的な言動(脅迫罪の可能性)
ポストやマンションの掲示板、玄関ドアに督促の張り紙をして敗訴したケースもあるため気をつけましょう。
連帯保証人への請求は、次のような方法で行うことをおすすめします。
- 書面を中心とした通知
- 日中の時間帯に連絡(9:00~21:00が目安)
- 複数日に分けて連絡
- 分割払いなどの提案
借主が失踪しているケースでは、連帯保証人との良好な関係を築くことがスムーズな解決につながります。
特に保証人が借主の親族である場合は、借主の所在情報を得られる可能性もあるため慎重に行いましょう。
借主を探し出したいときの有力な情報源になります。
注意点3. 家賃債務の時効の5年以内に解決する
家賃債権の消滅時効は、改正民法(2020年4月施行)により5年とされています。
特に借主失踪の場合、連帯保証人に対する法的手続きを早期に進めることが重要です。
5年以内の解決を目指し、連帯保証人へ早めに督促連絡しましょう。
なお、大家が家賃滞納者や連帯保証人を訴えると、家賃債権の時効は中断されます。
連帯保証人も支払いを渋るようなケースでは、早急に法的手続きの準備を進めることをおすすめします。
借主が家賃滞納のまま失踪したときの3つの相談例
最後に、家賃滞納者が失踪したときの相談例を3つご紹介します。
相談例1. 家賃滞納者の借主・連帯保証人を探したい
「賃借人が5ヵ月分の家賃(約40万円)を滞納したまま夜逃げしました。家具はほとんど残して行ったようですが、当方の連絡にはまったく応じません。借主の現在の所在地と連絡先を探して、直接請求したいのですが可能でしょうか?」
借主が夜逃げした場合、借主の所在調査を行います。
対応と解決策 | 具体例 |
1. 基礎情報の収集 |
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2. 調査の実施 |
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3. 発見後の対応 |
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このようなケースでは、約80%の確率で借主の所在を特定できます。
ただし、所在が判明しても支払いに応じるとは限らないため、連帯保証人への請求や法的手続きも並行して検討すべきでしょう。
相談例2:強制執行するために失踪先と勤務先を調べてほしい
「滞納者に対して支払督促を申し立てました。強制執行するために債務者の給与や預金口座を差し押さえたいのですが、現在の勤務先や取引銀行がわかりません。これらを調査して強制執行を実行できますか?」
強制執行のための財産調査は、専門的な調査が必要です。
対応と解決策 | 具体例 |
1. 勤務先の特定 |
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2. 銀行口座の調査 |
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3. その他財産の調査 |
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こうした調査結果を基に、弁護士と連携して効果的な強制執行の申立てを行います。
特に給与の差押えや給与日直後の預金差押えなど、タイミングを計った実効性のある強制執行が有効です。
相談例3:連帯保証人も行方不明で困っている
「借主が家賃9ヵ月分を滞納して失踪しましたが、連帯保証人にも連絡が取れません。契約時に記載された保証人の住所には現在住んでおらず、電話番号も不通です。どのように対応すべきでしょうか?」
連帯保証人と借主が同時に連絡不能になるケースは、意図的な可能性が高いです。
対応と解決策 | 具体例 |
1. 連帯保証人の所在調査 |
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2. 借主と連帯保証人の関係性調査 |
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3. 法的対応の準備 |
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このようなケースでは、借主と保証人の関係性や共謀の可能性も視野に入れた調査が必要です。
特に保証人が借主の親族や親しい友人である場合、意図的に連絡を避けている可能性があるため専門的な調査が重要になります。
借主が家賃滞納のまま失踪したときは「ファミリー調査事務所」に相談
家賃滞納者の失踪は、大家にとって深刻な問題です。
しかし、早めの対応や適切な法的手続きを踏むことで、滞納家賃の回収と物件の明け渡しが可能です。
ファミリー調査事務所では、家賃滞納・借主失踪案件を取り扱っており、高い解決実績があります。
- 全国・海外対応のネットワーク
- 豊富な調査ノウハウ
- 弁護士と連携した法的サポート
特に次のようなトラブルでお悩みの場合は、早めに当事務所へご相談ください。
- 借主の所在がまったくわからない
- 連帯保証人とも連絡が取れない
- 法的手続きのための調査が必要
- 時効が迫っており迅速に解決したい
ファミリー調査事務所では、24時間365日無料相談を承っております。
家賃滞納者の失踪でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
徹底的な調査と法的アドバイスで、円滑な解決までサポートいたします。
参考:国土交通省『民間賃貸住宅に関する相談対応事例集』、国土交通省『家賃債務保証の現状』、国土交通省『家賃債務保証の現状』、国土交通省『滞納・明け渡しを巡るトラブルについて』、国土交通省『賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(家主) 』、総務省『⑵ 家賃滞納者に対する的確な対応及び支援』、裁判所『意思表示の公示送達の申立てをされる方へ』、裁判所『民事執行手続』、裁判所『判決等はもらったけれど(強制執行の概要)』

執筆者:米良2025年7月15日
長年の情報収集経験を有し、英語での情報分析も得意とする。豊富な海外調査実績をもとに、国内外の問題を独自の視点で解説します。