現代社会の問題の一つ「引きこもり」は、全国で100万人以上ともいわれています。
最近では、ひきこもり状態に置かれている人も高齢化し、40歳以上の年齢層も増えたことから若者だけの問題ではなくなりました。
80歳前後の両親が、50歳前後のひきこもりの子を養うのが難しくなり、家庭崩壊や、親子間で殺人事件が起きるなどの「8050」問題とも併せてクローズアップされています。
こうした社会背景から、引きこもりの子どもを強引に外に引き出す、「引き出し屋」なるビジネスが横行しています。
この記事では、「引き出し屋」の実態とトラブルについてご紹介します。

執筆者:波多野 里奈2023年11月18日
教育学をはじめ臨床心理学、行動心理学を学び、人が抱える悩みや問題に寄り添いサポートすることを得意とする。結婚や離婚に関する問題、素行調査に関する相談解決実績多数。英語の語学力を生かし海外探偵調査の相談窓口を担当。
目次
「引き出し屋」とは

一般的に「引き出し屋」とは、不登校児や就労をしていない「引きこもり」や、「ニート」の人を自宅から連れ出し、自立に繋げることを目的とする「支援団体」です。
その多くは株式会社や一般社団法人に加え、NPO法人などの民間事業者によって運営されています。
もちろん社会的な意義から真面目に活動している団体は存在しますが、その業態を真似た反社組織や詐欺集団が「引き出し屋」と名乗りながら暴行や虐待あるいは監禁など悪質なやり方でトラブルを起こす事件も起きています。
例えば、親の依頼を受け、引きこもりの人の部屋に突然訪れ、了承を得ないまま連れ出し、団体の施設や寮に入所させるという強引な手法が挙げられます。
こうした強引な引き出しは、収容される施設や寮の劣悪な環境とともに社会問題化しています。
悪質な「引き出し屋」の実態

実際にあった二つの実例をご紹介します。
誓約書を見せられ「お前に人権はない」
見知らぬ複数の男性から、拉致同然に自宅から引きはがされ、クルマに押し込まれた。この「引きこもり」の人が連れていかれた施設とは、外から施錠され、監視役や防犯カメラで常に見張られる環境。しかも、携帯電話・スマホも没収され、外部との連絡も一切遮断された、まるで“監獄”のような部屋だったのです。
「支援施設」とは名ばかりの、あたかも“強制収容所”のような扱いですが、施設からの外出を求めると、親が署名・捺印した「誓約書」とともに「保護者代理人資格証明書」「自殺免責同意書」「返金不能同意書」といった書類を見せられ、「お前に人権はない」と吐き捨てられ、全ての自由が奪われました。
仮に、施設で暴れたりなどしたら、施設に雇用された精神科医によって、説明も同意も必要なく精神病院の緊急措置入院させる旨も記されています。
実際、こうした施設から脱走した人が、その後、高速道路のうえに架かる橋から飛び降り自殺した事件もありましたが、事件の真相は闇に葬り去られています。
親心に付け込む悪質なビジネスモデル
支援団体をうたったこのような「引き出し屋」に、子の身柄を引き渡し、自立支援・社会復帰につなげようという親心に付け込む、あまりに悪質なビジネスモデルといえます。
相談を持ち掛けたが最後、施設側から「お子さんを救えるのは我々だけ。放置すれば犯罪者予備軍になりかねません」と説得され、半ば強引に契約を結ばされます。
その後、請求された金額はなんと半年間の契約で約500万円。あまりの高額に驚くばかりか、「半年で更生は無理。さらに支援が必要です」と、さらなる契約更新を持ち掛けてきたのです。
施設の悪質極まりない実態と、親の心に付け込む高額請求のトラブルによって、この家族に残されたものは、家族間の断絶と約500万円の請求書のみでした。
この一連のでき事により、当人は施設から戻った後、さらに引きこもるようになり、社会復帰は遠くなってしまいました。
引き出し屋によるトラブル

引きこもりの人を強制的に外に出して自立を促す行為は、法的には様々な問題が生じる可能性があります。
人権侵害
強制的に外に出すことが個人の自由権やプライバシー権を侵害する可能性があります。人権侵害には損害賠償や法的制裁が伴うことがあります。
強制的な拘束
他人を強制的に外に出すことは、不当な拘束に該当する可能性があります。不当な拘束は法的に問題視され、刑事罰や損害賠償が課されることがあります。
脅迫または恐喝
強制的な手段を用いて他人に外出を強要する行為は、脅迫や恐喝に該当する可能性があります。これには法的な罰則がある場合があります。
侵入
他人の住居やプライバシーに無断で侵入する行為は、侵入罪に該当する可能性があります。
暴行や傷害
強制的な手段が暴行や傷害につながる場合、これに対して法的責任が問われる可能性があります。
真の自立支援とはなにか

「働くこと」「学校に行くこと」が解決なのか?
こうした悪質な“自称”自立支援団体に関われば、問題の根は深くなるばかりで、親子関係や家族の断絶を招くばかりか、当事者にはPTSDなどの心の傷、最悪、自殺に及びかねません。
引きこもりの当事者は自分が生きていることの価値を見つけられていないことが最大の問題点です。
まずは、引きこもっている当事者に「生きているだけで価値がある」ということを教えてあげられることが先決なのではないでしょうか。
それは、「就労してお金を稼ぐこと」や「教育を受けて知識を増やすこと」よりも、ずっと大事な、人間としての存在価値なのです。
当事務所が行なう被害実態調査

引き出し屋トラブルを解決において、探偵ができることとして次の方法が挙げられます。
暴力行為や人権侵害などにあたる事実を立証する証拠収集
引き出し屋業者の実態調査
被害の実態を明らかにし、被害の事実を証拠収集し、その後必要に応じて法的措置に進むためのサポートをいたします。
相手に関する事前情報はできるだけ多い方がいいので、ささいなことでも記録を残すようにしてください。
引きこもりのお子様本人の気持ちを無視しては前に進むことはできませんので、どのような解決を目指すか、我々と一緒に取り組んでいきましょう。
お見積もりは、お話を聞かせていただきご提示させていただきますので、まずは抱えておられる状況をご相談いただければとおもいます。
引き出し屋に関する相談窓口

お子様のことで心を痛め、心身ともに消耗し、誰かの助けを求めることは現状を変えたいという親心だとおもいます。
その親心につけ込んで、さらに家族関係を悪化させ、引きこもりになっているお子様をおいてけぼりにした強引な引き出しは、結果的によりその傷をえぐることになるかもしれません。
もし、ご家族だけでは解決できない状況にお困りでしたら、まずはご相談いただくことが大きな一歩になります。
無料相談を24時間承っておりますので、いつでもお気軽にお問い合わせくださいませ。ご連絡お待ちしております。