結婚している夫婦の誰しもが、何十年にも及ぶ夫婦生活を幸せに営むことを望んでいるはずです。
しかし、そんな理想とは裏腹に、夫婦の約38%は離婚するのが実情です。
離婚は突然起こるわけではなく、さまざまな原因、その前兆があります。
この記事では、離婚した夫婦における離婚原因について、男女で比較しながら考察し、夫婦関係が壊れる前兆について解説しています。
安定した夫婦関係を保つための知識として、また、現在のパートナーとの関係の理解を深める手助けとして、ご一読ください。
目次
近年の日本の離婚状況
令和5年における婚姻件数は47万4717組、離婚件数は18万3808組で、離婚率は約38%でした。(厚生労働省「令和5年(2023年)人口動態統計月報年計の概況」参照)
日本では3組に1組の夫婦が離婚している状況にあるといえます。
一方で、医療の発達による長寿化や少子化にともなう育児期間の短縮で、夫婦2人で生活する期間も長くなっています。
年代別に見た離婚の状況
結婚から5年以内の比較的若年層の夫婦が最も離婚する割合が多く、全体の1/3をしめます。
一方で、近年増加傾向にあるのが、結婚から20年以上経過している中高年層の離婚です。
これは、長寿化と少子化により、夫婦二人で生活する時間が長くなったことによる「性格の不一致」が顕在化した結果であると考えられています。
結婚満足度の男女差
日本における「結婚満足度」は、夫に比べて妻の方が低い傾向にあります。
また、家庭裁判所に申立てられた離婚調停事件についても、約7割が妻側から申立てられたものです。
このことから、夫婦関係に不満を持ち、離婚を考えやすいのは、女性の方が圧倒的に多いことがわかります。
しかし、日本はいまだに家庭内での性別役割意識が残っており、家計を主に支えているのが夫である家庭が多い現状です。
つまり、女性は、離婚したいと考えても、経済的な不安から離婚に踏み出せないというパターンが多いのです。
離婚した夫婦の〝離婚原因〟について
現在、結婚する夫婦のほとんどが恋愛結婚です。
しかし、お互いの性格に好意を寄せて結婚したにも関わらず、離婚した夫婦の離婚理由でもっとも多いのが「性格が合わない」(司法統計年報2023)なのです。
本来ならば、相手の性格を含めて好きになって結婚したのだから、離婚理由が「性格が合わない」になるのはおかしいはずです。
すなわち、考えられるのは、性格はもちろん好きになって結婚したのだけれど、ほかの何らかの理由によって夫婦関係が悪化し、とうとう最後には性格まで嫌になった、という流れです。
「性格が合わなくなった」のは結果であって、そこに至る原因とプロセスがあると考えるのが妥当でしょう。
離婚原因には男女差がある
調査会社によるアンケートの結果、夫婦双方の離婚に対する考え方には、男女で違いがあることがわかりました。
「結婚後、離婚したいと考えたことはありますか?」
という質問に対し、約半数の女性が「離婚を考えたことがある」と答えた反面、男性は約3割に留まりました。さらに、男性は「離婚を考えたことがない」と断言する人が6割に及んだのです。
また、離婚した夫婦が考える〝離婚原因〟についても、男女によって大きな違いがあることがわかりました。
以下で詳しく見てみましょう。
男性が考える離婚原因
1位 生活のすれ違い
2位 愛情が冷めた
3位 性生活の不満
男性が考える離婚原因の1位は、「生活のすれ違い」でした。
男性は家庭に安心や癒しを求めることが多いと言われています。
そのため、妻とのすれ違いの生活が続いた場合、「期待していた婚姻生活と違う」と考え、離婚を検討するようになるのです。
また、男性が考える離婚理由として、3位に「性生活の不満」があげられているのも特徴的です。
いわゆる夫婦のセックスレス問題であり、出産などを期に次第に夫婦のセックスの頻度が落ちる、またはまったくセックスをしなくなるという状態を指します。
男性は女性に比べ、夫婦のセックスレスの状態に危機感を覚え、離婚を検討し始めるといえます。
女性が考える離婚原因
1位 金銭問題
2位 愛情が冷めた
3位 義両親との関係
特徴的なのは、女性が離婚を考える一番の理由が「経済的な問題」だということです。
この背景には、夫に対して「主に家計を支えてほしい」と期待する妻が多いことが考えられます。
何らかの事情で、夫の所得が妻の期待するレベルに満たないときや、金銭感覚の違いなどから予想外に家計が苦しいときなどに、妻は将来への不安を感じ、離婚を考え始めるのです。
さらに、女性特有の離婚理由として挙げられるのは「義両親との関係に悩んでいた」ということです。
日本の古い家族観の名残りによって、〝嫁・姑問題〟で悩んでいる女性も多くいます。
特に地方では、いまだに家父長制の感覚が色濃く残っている家庭も多く、「嫁は義実家に尽くすべきだ」という考えを押し付けられて苦しんでいる女性も多いのです。
離婚原因から考える〝夫婦関係が壊れる前兆〟
離婚原因を見てきてわかる通り、男女で考え方も不満に思う点も違います。
そうした中で生まれる軋轢を細かく紐解いていきます。
金銭的な不安・問題が生じた
離婚と経済的な問題との間には、非常に密接な関係があります。
元は違う家庭で生活していた人間が、婚姻を期に同居をして生活を共にし、家計をひとつにしてやりくりをするということは、実はとても難しいのです。
以下、より具体的なケースで考えてみます。
日本は、男女平等をかかげ、女性の雇用拡大を進めている一方、いまだに家庭内での性別役割意識も根深く残っています。
「夫は外で稼ぎ、妻は主に家事や子育てをする」
という感覚が染み付いている人も多く、妻が夫に対し、
「主に家計を支えてほしい」
と、期待する場合も多いです。
しかし、夫の稼ぎが想定・予定していたとおりに上昇しない、あるいは、ダウンしてきたという場合、妻の夫に対する期待水準とのギャップが開いてしまいます。
家庭の所得が低いと、将来が不安になります。その不安感を解決しないまま生活を続けると、次第にパートナーとの信頼関係も悪化してきてしまうのです。
夫婦それぞれの金銭感覚に大きな差があるとき、共同生活を続けることが困難になる場合があります。
例えば、夫は自炊で食費を抑えたいと考えているのに、妻は頻繁に外食に行きたがるタイプの場合、日常の食費に関する夫婦の考えの違いから、次第に夫婦の関係が悪化する可能性があります。
小さなことのように思えるかもしれませんが、日々の出費に関わる食費は家計の中でも大きな割合を占めるので、夫婦の金銭感覚の違いがはっきりと表れるのです。
ほかにも、夫婦が共働きの場合、家計の収入が増えることで、それぞれのお金の使い方に関する考え方が明確になります。
住居費や娯楽費、子どもの教育に関する費用など、どこでどうお金を使いたいか、夫婦でその考え方の違いがあまりに大きい場合もあります。
そして次第に家計管理や将来の計画の足並みが揃わなくなり、夫婦関係にまで影響を及ぼしてしまいます。
パートナーのギャンブルが原因で離婚を考える人もいます。
パチンコやスロット、競艇や競馬などに多額のお金を注ぎ込まれてしまうと、パートナーに嫌気がさすと同時に、将来の家計設計も不安に感じてしまいます。
また、ギャンブルを繰り返す人の中には、依存症に陥っている場合もあります。
パチンコやカジノなどのギャンブルに依存した結果、仕事もせずギャンブルにのめり込み、借金を抱えてしまうことは珍しくありません。
このように、パートナーが日頃からギャンブルにのめり込んで、家庭にまで影響を及ぼしている場合、離婚を決意することもあるでしょう。
夫婦の一方がパートナーの意向を無視して勝手に借金を重ねた場合、夫婦の信頼関係を壊す原因になります。
一般に、借金の額は増えていく傾向にあります。
借りた本人だけで返済ができなくなったとき、しぶしぶ配偶者や親族が肩代わりして返済するというケースはよくあります。
そうした対応で借金問題のすべてを解消できればよいのですが、往々にして、借金問題は何度も繰り返し起きることが多いです。
将来にわたり、パートナーの借金の不安を抱えながら生活を続けることは、精神的に耐え難いでしょう。
そのため、パートナーの隠れた借金が何度も発覚する事態になると、パートナーへの信頼を失ってしまい、離婚に至ることも少なくないのです。
パートナーへの愛情が薄れてきた
先に記載したように、パートナーへの信頼や愛情が薄れてきた背景には、さまざまな事情が隠れています。
相手への愛情が薄れてきた背景に、経済的な問題が隠れているケースは少なくありません。
たとえば、共働きの妻が仕事で疲れて帰ってきても、専業主婦と変わらない家事が待っており、家事に非協力的な夫の世話までしなくてはならない、というような家庭は案外多いものです。
仕事と家事に追われ、心身ともに疲れる日々が続いていくと、「あなたの稼ぎが少ないから、私は不幸になった」と、他責的な考えに陥ってしまい、相手への尊敬や想いが薄れてしまう場合があります。
就業時間の関係などで、夫婦の生活リズムが合わない場合があります。
起床・就寝時間や食事のタイミングなどが夫婦でばらばらになると、夫婦間のコミュニケーションが減り、次第に相手への関心や愛情が薄れていくことがあります。
子どもが生まれたタイミングも、夫婦関係が悪化しやすいポイントです。
海外の研究結果では、第一子が生まれた夫婦の7割近くが、夫婦関係に不満を持つというデータもあります。
子どもが生まれると、子育ての負担から生活形態が大きく変化します。
そのため、夫婦それぞれが相手への期待や欲求が急激に高まりますが、お互いに余裕がないために、それがなかなか満たされない状態が生まれやすくなります。
妻は、「夫にもっと育児に協力してもらいたいのに、期待に応えてもらえない」と考えます。
夫のほうは、「妻がイライラしているのが嫌で、家庭の居心地が悪い」と考えます。
このような夫婦それぞれの不満が、夫婦関係を悪化させる原因となる場合があるのです。
異性問題が発覚した
パートナーの不倫や浮気をきっかけに、今まで円満だった夫婦関係に亀裂が生じ、離婚を考える場合があります。
不倫とは、民法上の貞操義務に違反して、既婚者が配偶者以外の人と肉体関係(性交渉)をもつことをいいます。
不倫は法律上、不貞行為となります。
たとえ不倫はされなくても、パートナーがほかの異性に好意を持ったり、スキンシップをしたりした場合なども、配偶者としてはパートナーに裏切られた気持ちになるでしょう。
このような裏切り行為が原因で、夫婦関係が壊れる可能性があるのです。
なお、配偶者が不倫をした場合、民法第770条第1項に定める「配偶者が不貞な行為があったとき」という離婚事由に該当します。
そのため、不倫を理由として離婚することが可能です。
しかし、不倫した側からの離婚の申し出は、基本的には、相手方が合意してくれなければ認められません。
セックスレス
日本の夫婦の約6割がセックスレスの状態にあるという調査結果もあるほど、実は多くの夫婦がこれに該当します。
しかし、たとえセックスレスであっても、夫婦がその状態を互いに合意しているのであれば、全く問題ないでしょう。
なぜなら、身体的親密さがない場合であっても、ほかの方法で親密さを深めていくことで、夫婦関係を安定させることも可能だからです。
しかし、どちらか一方がセックスレスであることに不満を抱えているのに、もう一方が話し合って歩み寄る努力ができない場合は、離婚につながる要因になってしまうのです。
義両親との関係に悩んでいる
義両親との関係に悩み、それがきっかけで夫婦関係が悪化してしまう場合があります。
特に子どもが生まれるタイミングで、義両親との関係に悩み始める人が多い傾向にあります。
一般的に子どもが生まれると、子どもに関することで義両親との関わりが増えます。
義両親から子育てに関して過度に干渉された場合は、不満を溜め込む人も多いようです。
また、義両親との関係に悩んでいる人は、夫よりも妻の方が多い傾向にあります。
しかし夫側としても、結婚後も毎日のように実母と連絡を取り合い、足しげく実家に通うような妻に対しては、不満を募らせる場合もあります。
いずれにせよ、自分の不満をパートナーに理解してもらえない、悩みを軽く捉えられるという状況が相手への不信感を生み、夫婦関係の悪化の原因となるのです。
DV被害を受けた
パートナーからDV(ドメスティック・バイオレンス)の被害を受けたときは、自分の心身の安全を守るために、離婚を考える人が多いでしょう。
DVとは、配偶者・恋人・内縁関係の相手などの親密な関係にある、または過去にそのような関係にあった者から振るわれる、精神的・身体的な暴力のことをいいます。
DVには、殴る・蹴るなどの身体的暴力と、言葉や態度などで相手の心を傷つける精神的暴力に分かれます。
法務省による「協議離婚に関する実態調査結果の概要」によると、DVが原因で離婚した夫婦のうち、7割以上がモラルハラスメントなどの精神的暴力が原因でした。
身体的暴力だけでなく、パートナーの心ない言葉や態度による傷つきも、充分に離婚原因になるのです。
夫婦関係に悩んだら
良好な夫婦関係を続けていくには、一人で抱え込まず、誰かに相談することが大切です。
信頼できる人に相談する
一人で抱え込まずに、実家の親族や友人など、信頼できる人に相談に乗ってもらうことが大切です。
家庭内のことは盲目的になりがちなので、他人の意見を聞くことで、自分の家庭の状況を客観的に見直すことができる可能性があります。
家族療法・カップルセラピーを利用する
本来、夫婦は、どちらかが犠牲や我慢を強いられることなく、お互いの気持ちを尊重し、自分の考えや気持ちを適切に伝え合える関係でなければなりません。
なんらかの理由で、夫婦関係が悪化してしまったときは、専門的な知識を有するカウンセラーの元で、関係を修復する手助けをしてもらうことが有効です。
離婚を検討し始めたら
どうしても夫婦関係を改善できずに、離婚を検討する場合もあるでしょう。
その場合は一人で抱え込まずに、専門家などに早めに相談することが大切です。
弁護士に相談する
法律の専門家である弁護士に相談した場合、離婚についての相談に乗ってもらえます。
また、家庭裁判所へ離婚調停を申立てる場合、申立て手続きを代行してくれたり、相手方との連絡や調停での交渉などをサポートしてくれます。
行政の窓口に相談する
市区町村の窓口で、離婚についての相談を受け付けている場合があります。
弁護士や法律知識を有する職員に無料で相談することができ、家庭裁判所への手続きや、慰謝料などの請求方法についての知識を得ることができます。
探偵に依頼する
離婚を考えている理由が、パートナーの不倫や浮気、DV(ドメスティック・バイオレンス)などである場合、離婚協議をする前に、そのようなケースに詳しい専門家に相談することは、とても大切です。
なぜなら、不倫やDVなどのケースは、離婚協議で揉める場合が多く、慰謝料請求などの協議を有利に進めるために、相手の不法行為の事実を立証できるような証拠が必要になる場合があるからです。
しかし、そのような証拠を素人が集めようとしても、なかなか難しいのが現実です。
そこで、探偵などの専門知識があるプロに依頼することで、安全に、かつ確実に証拠集めをすることができるのです。
離婚をするかどうか迷ったら
当社は、不倫や浮気、DVなどのケースのご相談を随時受け付けております。
「うちの場合、探偵に依頼するべきなのかわからない」
というときでも、お話だけでも構いませんので、お気軽にご連絡ください。

執筆者:米良2025年6月3日
長年の情報収集経験を有し、英語での情報分析も得意とする。豊富な海外調査実績をもとに、国内外の問題を独自の視点で解説します。