「支払い能力がない連帯保証人に未払い金を請求できる?」「支払い能力がない連帯保証人に法的手段は有効なのか?」など、疑問を抱いている大家さんもいらっしゃるでしょう。
借主が家賃を滞納しており、連帯保証人に未払い金を請求したいとお悩みの大家さんも少なくありません。
しかし、連帯保証人に支払い能力がないため未払い金は泣き寝入りするしかないと諦めてしまうケースも多く見られます。
支払い能力がない連帯保証人にも、未払い金の請求は可能です。
この記事では、支払い能力がない連帯保証人に未払い金を請求する前に押さえておきたいポイントや、法的手段を取るのが難しい場合の代替手段などを解説します。
支払い能力がない連帯保証人から未払い金を回収したい方は、ぜひ参考にしてください。
支払い能力がない連帯保証人に法的手段を取る前に押さえておきたいポイント
まずは、支払い能力がない連帯保証人に法的手段を取る前に押さえておきたいポイントを解説します。
連帯保証人制度の仕組みを理解する
支払い能力がない連帯保証人に法的手段を取る前に、連帯保証人制度の仕組みを知っておきましょう。
連帯保証人の責任範囲や権利を把握しておけば、適切な対応策を選択できます。
連帯保証人制度とは、借主(主債務者)が契約上の義務を果たせない場合、連帯保証人が借主と同じ立場で責任を負う法的な制度のことです。
連帯保証人は通常の保証人とは異なり、以下3つの権利を持ちません。
権利 | 意味 |
催告の抗弁権 | 債権者が保証人に借金返済を請求してきたとき、借りた本人に返済を求めるよう主張できる権利 |
検索の抗弁権 | 借りた本人に返済できる財産があることを証明できれば、本人の財産から取り立てるよう主張できる権利 |
分別の利益 | 保証人が複数存在する場合、各保証人は借金を人数で割った金額だけ支払えばよいという権利 |
つまり、どのような言い訳をしても連帯保証人は支払い請求を断れません。
また、連帯保証人に請求できるのは未払い分の家賃だけではありません。
遅延損害金や原状回復費、火災の修繕費用や損害賠償費用も請求できます。
借主が失踪したり自己破産したりした場合でも、連帯保証人の支払い能力を問わずすべての未払い金において支払い請求ができます。
※参考:民法・第四百五十二条・第四百五十三条・第四百五十四条・第四百五十六条|e-GOV法令検索
時効の状況を確認する
連帯保証人への未払い金請求には時効があるため、法的手段を取る前に状況を確認しましょう。
時効が成立しているにもかかわらず法的手段を取ると、訴訟費用が無駄になるリスクがあります。
時効までの期間は、権利を行使できることを知った日から5年または権利を行使できるときから10年のいずれか早いほうです。(※2020年4月1月以降の契約)
たとえば、借主が家賃を滞納しており連帯保証人に未払い金の支払いを請求する場合、最後に借主から支払いがあった日から5年経過していれば連帯保証人は時効援用を主張できます。
時効援用とは、時効期間が過ぎたことを理由に「支払い義務はありません」と正式に主張することです。
時効援用により、時効の効果が発生し連帯保証人に債務の支払い義務がなくなります。
連帯保証人が時効援用を主張すれば、大家は連帯保証人に未払い金を請求できません。
なお、時効成立前であれば、裁判や支払督促などの法的措置を取ることで時効をリセットできます。
未払い金回収のチャンスを逃さないためにも、法的手段を取る前に状況確認をしましょう。
※参考:民法・第百四十五条・第百六十六条|e-GOV法令検索
連帯保証人の支払い能力を調査し適切な対応を選択する
法的手段を取る前に連帯保証人の支払い能力を調査し、状況に応じて適切な対応を講じる必要があります。
連帯保証人に支払い能力がない場合、法的手段を取っても訴訟費用が回収費用を上回る恐れがあります。
連帯保証人の支払い能力に応じて取るべき対応は、以下のとおりです。
支払い能力がある |
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支払い能力が不明 |
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支払い能力がない |
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連帯保証人に支払い能力があるかどうかは、収入や財産を調べればわかります。
収入は賃貸契約時に取得した収入証明書や納税証明書、財産は法務局で不動産登記簿謄本を取得すれば確認できます。
ただし、連帯保証人の預金口座の残高確認や金融資産の有無など、詳細な財産調査が必要な場合は、個人情報保護法の規約により債権者が調査できる範囲には限界があるため注意が必要です。
詳細な財産調査が必要な場合は、弁護士や探偵などの専門家に依頼しましょう。
支払い能力がない連帯保証人に大家が取るべき督促手段
支払い能力がない連帯保証人に法的手段を取る前に、督促手段で自主的な支払いを促しましょう。
ここでは、支払い能力がない連帯保証人に大家が取るべき督促手段を解説します。
電話や書面による督促
連帯保証人に支払い義務があることを認識させ、任意での支払いを促すために電話や書面による督促を実施します。
電話や書面による督促を行うと、連帯保証人に心理的なプレッシャーを与えられます。
たとえば、借主が家賃を滞納した場合、管理会社から連帯保証人に連絡し「借主と同じ責任を負う義務がある」と伝えれば、何とかして未払い金を支払わなければと危機感を持ってもらえ自主的に支払われることもあります。
ただし、電話や書面による督促は法的拘束力がないため、連帯保証人が支払いに応じない場合は次の段階に進む必要があります。
内容証明郵便による正式催告
電話や書面による督促を実施しても効果がない場合は、内容証明郵便による正式催告を行いましょう。
連帯保証人に「期限内に支払いが確認できない場合は法的措置を取る」と記載した内容証明郵便を送付すれば、事態の深刻さを理解し自主的に支払われることもあります。
また、内容証明郵便には時効の完成猶予効果があり、催告時から6ヵ月間時効が猶予されます。
これにより、時効による債権消滅を回避し次の法的手段の準備を進められます。
支払い能力がない連帯保証人に大家が取るべき法的手段
督促手段を講じても連帯保証人が支払いに応じない場合は、法的手段を取りましょう。
ここでは、支払い能力がない連帯保証人に大家が取るべき法的手段を解説します。
支払督促・民事訴訟を提起する
督促手段を講じても連帯保証人が支払いに応じない場合、まずは支払督促や民事訴訟を提起しましょう。
支払督促や民事訴訟を行うことで、連帯保証人の支払い義務を法的に確定させられます。
支払督促では簡易裁判所書記官が債権者の申立てにもとづいて、連帯保証人に金銭の支払いを命じます。
連帯保証人には催告の抗弁権や検索の抗弁権がないため、原則として支払いを拒否できません。
支払督促が確定すると、連帯保証人の支払い義務が法的に確定され強制執行が可能になります。
民事訴訟では、地方裁判所や簡易裁判所が当事者双方の主張と証拠を審理し、最終的に判決を下す仕組みです。
民事訴訟で勝訴判決を得て連帯保証人の支払い義務が確定すれば、連帯保証人は支払いを拒否できず強制執行が可能になります。
強制執行による財産差し押さえを実行する
支払督促や民事訴訟で勝訴判決を得て連帯保証人の支払い義務が確定すれば、強制執行による財産差し押さえが可能です。
連帯保証人に支払い能力がなくても、強制執行による財産差し押さえを拒否することはできません。
強制執行による財産差し押さえを実行すれば、連帯保証人の給与や不動産、預金などを差し押さえて未払い金を回収できます。
支払い能力がないとは言え、不動産などの高額な財産がないだけで働いて給与をもらっていたり、預金を持っていたりするケースも少なくありません。
そのため、強制執行による差し押さえで未払い金を回収できる可能性が高いでしょう。
ただし、強制執行を実行する場合は、差し押さえ可能な財産を把握し特定することが重要です。
専門家ではない限り、連帯保証人の正確な収入や財産を把握するのは難しいでしょう。
確実に未払い金を回収したい場合は、弁護士や探偵などの専門家に依頼するのがおすすめです。
支払い能力がない連帯保証人に強制執行が難しい場合の代替手段
支払い能力がない連帯保証人に対して強制執行が難しい場合の代替手段として、探偵による専門調査があげられます。
強制執行には差し押さえ対象の財産の特定が必要ですが、個人情報保護法により債権者が単独で調査できる範囲には限界があるためです。
ここでは、支払い能力がない連帯保証人に強制執行が難しい場合に検討したい、探偵による専門調査について解説します。
データ調査による隠ぺい財産の発見
探偵はデータ調査により、連帯保証人が隠ぺいしている財産を発見します。
データ調査では独自の情報網と調査技術により、連帯保証人が隠ぺいしている財産を迅速に特定します。
たとえば、預貯金債権の差し押さえには銀行名と取扱支店を特定する必要があるため個人での調査は難しいでしょう。
探偵によるデータ調査では、個人では難しい銀行口座に関する手がかりを得られます。
また、不動産や証券、車両などの隠し財産も特定可能です。
調査により連帯保証人が隠ぺいしている財産を発見すれば、強制執行で差し押さえて未払い金の回収が実現します。
実地調査による生活状況の把握
実地調査により、連帯保証人の実際の生活状況を把握し支払い能力の有無を証明します。
たとえば、高級マンションに住んでいたり毎日のようにギャンブルに出かけていたりなどの証拠を収集すれば、支払い能力がないという言い訳を覆せるでしょう。
また、働いている様子が見られないのに羽振りが良い、毎日のように外食しているなどの証拠をつかむことで、支払い能力があるにもかかわらず逃げているケースを特定することも可能です。
実地調査では連帯保証人の家族・勤務先・財産など、未払い金回収に有効な情報収集も実施します。
さらに、所在調査と組み合わせることで、連帯保証人が行方不明の場合でも居場所を特定し現在の生活状況を把握できます。
実地調査により連帯保証人の支払い能力の有無を証明すれば、未払い金を回収できる可能性が高まるでしょう。
まとめ
連帯保証人に支払い能力がない場合でも、時効内であれば支払い義務はなくなりません。
借主が家賃を滞納しており時効を過ぎていない場合は、連帯保証人に請求しましょう。
連帯保証人が支払いに応じないケースでは、督促手段や法的手段を取るのがおすすめです。
ただし、支払い能力がない連帯保証人に対して、強制執行を実行するのは難しいでしょう。
なぜなら、個人情報保護法により個人での調査には限界があるため、連帯保証人の支払い能力の有無を正しく判断できないからです。
支払い能力がないかどうか正確に判断するためには、専門家による調査が不可欠です。
ファミリー調査事務所の証拠収集力は、業界最高水準を誇ります。
連帯保証人に支払い能力がないのかどうかを徹底的に調査し、必要に応じて裁判準備のサポートを提供いたします。
ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

執筆者:米良2025年7月24日
長年の情報収集経験を有し、英語での情報分析も得意とする。豊富な海外調査実績をもとに、国内外の問題を独自の視点で解説します。