「相続の問題が発生したが、相続人の一人と連絡が取れなくて困っている」
「相続人を調べたら隠し子の存在が発覚したが、どこにいるのかもわからない」
家族が亡くなり、相続の問題が発生したとき、法定相続人全員とスムーズに連絡が取れないケースは、意外と少なくありません。
中には、行方不明になっており、誰も所在がわからないような場合もあります。
そのような場合、どのように相続人を捜索し、相続手続きを進めればよいのでしょうか。
この記事では、行方不明の相続人の捜索方法や、連絡が取れない相続人がいる場合の相続手続きの進め方について解説しています。
目次
遺産分割手続きの基礎知識
家族が亡くなり、遺産問題に直面するまで、遺産分割に関する情報に触れる機会がない人も多くいます。
ここでは、遺産分割手続きの流れや留意点を簡単にまとめました。
相続の開始
人が亡くなると、その瞬間から相続が開始します。
亡くなった人を「被相続人」といい、亡くなった人の財産に関するすべての権利義務を引き継ぐ人を「法定相続人」と呼びます。
法定相続人の決定
法定相続人が誰になるかを調べることを「相続人調査」といいます。
相続人調査は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を取り寄せて行います。
法定相続人になれるのは、被相続人の配偶者と、被相続人と血縁関係にある者だけに限られます。
民法では相続人になれる人の範囲と順位を定めています。
誰が法定相続人となるかは、被相続人の死亡の日(相続発生の日)を基準とし、民法にしたがって決定されます。
法律的に有効な遺言書がある場合、遺言の内容が法定相続より優先されます。
ただし、遺言による遺産分割が、相続人に最低限保証された遺留分を侵害しているときは、その相続人は、遺留分侵害額請求により、侵害された遺留分を取り戻すことができます。
遺産分割協議と相続財産の決定
遺言書がないとき、相続人が1人しかいない場合を除き、相続人全員が話し合いを行い、誰がどの財産をどれだけ引き継ぐのかを決めなければなりません。
この話し合いを「遺産分割協議」といいます。
不公平な遺産分割を防ぐため、この遺産分割協議は、原則相続人全員が参加する必要があります。
相続人の一人(または複数)と連絡が取れないとき
遺産分割協議を行う際、相続人の中で1人でも欠席者がいる場合は、その協議は無効となります。
そのため、相続人全員に連絡し、遺産分割協議への参加を促す必要がありますが、現実では、すべての相続人にスムーズに連絡が取れないケースもあります。
以下、相続人と連絡が取れない具体的なケースを紹介します。
事例1:連絡を試みたが音信不通の人がいる
もともと当該相続人と顔見知りだった場合です。
被相続人が死亡したことと、遺産分割協議に参加してほしいことを伝えるために、久しぶりに当該相続人に連絡を取ろうと試みたところ、まったく音信不通だったというケースになります。
事例2:所在不明の隠し子や知らない親族が判明した
遺産分割協議のために相続人調査を行ったところ、顔も知らない相続人の存在が判明した場合です。
- 過去に婚姻歴を有していることがわかり、前妻との間に子どもがいた
- 初めて知る兄弟姉妹などの存在があった
- 婚姻歴がなくても、認知した子どもの存在が判明した
このような、今まで存在さえ知らなかった隠し子や親族が、今どこにいるかもわからず、連絡が取れないようなケースもあります。
行方不明の相続人の捜索方法
では、具体的にどういった方法で行方不明の相続人を捜索すればよいのでしょうか。
ここでは、自力で捜索する方法、法的手続きを取る方法、そして弁護士などの法律の専門家や、探偵などの捜索の専門家に依頼する方法に分けて紹介します。
戸籍を取り寄せて探す
戸籍には、生まれてから死亡するまでのすべての身分事項(出生地や、誰と婚姻したかなど)が記録されています。
連絡が取れない相続人がいる場合、当該相続人の現在戸籍について「戸籍の附票」を請求します。
戸籍謄本の戸籍の附票には、現在の住民票の所在地が記載されているので、これにより記録上での相続人の現在の住所を知ることができます。
住所がわかれば、その場所に事情を説明した手紙を送ります。
相続人が手紙を受け取れば、折り返し連絡をしてもらえる可能性があります。
親族や知人をあたる
上記の手紙による方法でも連絡が取れない場合は、その相続人を知る親族や友人・知人に手当たり次第に連絡をして、相続人の居どころや連絡先について知っていることはないか尋ねるという方法が考えられます。
当該相続人についての情報を得られる可能性があります。
自力で捜索するメリット・デメリット
自力で行方不明の相続人を捜索するメリットは、捜索にかかる金銭的な費用を低く抑えられる点が挙げられます。
また、プライベートな事情を他人に必要以上に話すことなく、手続きを進められるということもメリットです。
デメリットとしては、法的知識がない場合、戸籍の取り寄せなどの手続きに難解さを感じたり、関係者への連絡の中で思わぬトラブルに発展する可能性がある点が挙げられます。
相続人調査のためには、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を取り寄せる必要があります。
しかし、婚姻などにより新しい戸籍を作っていたり、本人に戸籍の異動がなくても、法律の改正や戸籍簿のコンピューター化などにより戸籍が改製されていたりすることがあるため、一つの戸籍では全ての記録が確認できないことが多くあります。
つまり、被相続人が婚姻や離婚、又は他の戸籍届出によって本籍を移している場合などは、順に市区町村をたどって戸籍を集めていかなければならないのです。
このような手続きを法律知識のない人間が一人でやるのは難しいでしょう。
不在者に関する法的手続きを取る
書面を送るなどの方法で当該相続人との連絡を試みたものの、まったく連絡が取れないときは、法的手続きを検討するという方法があります。
不在者に関する法的手続きをきちんと取れば、当該相続人と連絡が取れないままでも、遺産分割協議を進めることができます。
不在者財産管理人を選任する
不在者財産管理人とは、連絡が取れない相続人に替わって、相続財産の管理をする人のことをいいます。
家庭裁判所で不在者財産管理人選任の申立て手続きを行い、家裁の判断で選任してもらいます。
不在者財産管理人になれるのは、利害関係のない被相続人の親族などです。
申立て時に候補者がいない場合は、家庭裁判所の判断で弁護士や司法書士などの専門家を選任します。
不在者財産管理人が選任されたら、家庭裁判所の許可を得た上で不在者に代わって遺産分割協議に参加してもらうことができます。
そして、不在者が見つかるまで、不在者財産管理人に相続財産を管理し続けてもらいます。
失踪宣告の手続きを取る
当該相続人が行方不明になってから7年以上経過している場合は、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てを行うことができます。
失踪宣告をされると、法律上、その人は死亡したものとみなされます。
失踪宣告を申立てるための要件は、
①生死不明になってから7年以上が経過していること
②地震等の災害によって生死不明の場合は、1年以上が経過していること
です。
また失踪宣告した後に行方不明者が現れた場合、失踪者が家庭裁判所に報告することで失踪宣告は取り消されます。
しかし、既に遺産分割手続きを終え、分割及び消費された財産を取り戻すことはできないため、賠償請求などの方法で対応することになります。
法的手続きを取るメリット・デメリット
不在者に関する法的手続きを取るメリットは、当該相続人と連絡が取れない状況でも遺産分割協議を進めることができる点です。
一方で、法的手続きを取る場合のデメリットもあります。
不在者財産管理人選任の申立ての場合は、申立て時に、家庭裁判所から予納金の納付を請求される場合があります。
予納金は申立人の負担であり、個々の事例により異なりますが、平均で20万円から100万円ほど請求されることが多いようです。
また、不在者財産管理人の選任申立時に、財産管理人の候補者を立てることができますが、誰を選ぶかは家庭裁判所の権限なので、必ずしも候補者が選ばれるとは限りません。
さらに、手続き自体にも時間を要します。
家庭裁判所が不在の事実を調査する必要があるため、不在者財産管理人が選任されるまで3ヶ月から4ヶ月ほどかかる場合が多いです。
加えて、選任後には、不在者財産管理人に対して報酬を支払い続けなければなりせん。
このように、不在者財産管理人選任の申立てには複数のデメリットがあります。
失踪宣告の手続きの場合も、同様にデメリットがあります。
審判確定までに時間がかかる点が挙げられます。
家庭裁判所が失踪者について調査をする期間や、一定期間以上の官報公告の必要があるため、申立てから審判確定まで一年以上かかる場合が多いです。
法律や捜索に関する専門家に依頼する
上記のように、専門知識のない人が自力で所在不明者を捜索したり、法律手続きを進めたりするのは、思った以上に困難です。
そこで、専門知識を有するプロに相談することで、円滑に問題を解決できる可能性が高まります。
弁護士に依頼する
自力で相続人調査や行方不明の相続人の捜索をするのが困難な場合は、弁護士に依頼するという方法があります。
弁護士に依頼することで、相続人調査や、連絡が取れない相続人の住所を調べるにあたっての戸籍取得の手続きを代行してもらえます。
また、当該相続人の住所宛に送る手紙の作成や、相続人とのやり取りの窓口にもなってもらえます。
探偵に依頼する
法的手続きを取らずに当該相続人の所在を明らかにしたい場合や、弁護士に依頼しても当該相続人の居場所や連絡先がわからない場合は、探偵に依頼するという方法があります。
探偵は、普段から多くの行方不明者の所在調査を行なっている実績があり、人探しに関するさまざまなノウハウを持っています。
名前や住所などの限られた情報でも、探偵であれば、情報網や捜索スキルを駆使して調査を進めるため、当該相続人の所在を特定できる可能性が高いのです。
また、当該相続人の所在だけでなく、事前に身元の情報も知りたいような場合にも、探偵に依頼することで、安全かつ確実に得たい情報を手に入れることができます。
相続人が行方不明でお悩みの方はご相談ください
当社では、所在不明者に関するさまざまなご相談をお受けしております。
人探しのプロフェッショナルである探偵に依頼することで、精神的・物理的な負担なく、行方不明者の所在を明らかにすることができます。
お一人で悩む前に、まずはご相談だけでも、お気軽にご連絡ください。
ご相談は、お問合せフォーム・電話・メール・LINEにて24時間お受けしています。

執筆者:米良2025年6月21日
長年の情報収集経験を有し、英語での情報分析も得意とする。豊富な海外調査実績をもとに、国内外の問題を独自の視点で解説します。